少子高齢化が進む日本では、症状に差はありますが、認知症になってしまう高齢者が増えています。
認知症になると判断力が低下し、ご自身の生活や財産を守れなくなるほか、意思も伝えられなくなってしまいます。
そのような場合に備える制度が「任意後見制度」です。
この記事では、任意後見制度と「任意後見人」について解説します。どのような人が任意後見人になれるのか、できることやできないことなどについて解説します。
終活を始めてみようかと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

まずは、制度について説明しましょう。
任意後見制度とは、将来の認知症や病気などによって判断能力が低下した際に備え、意思がはっきりしている内に信用できる人を自ら選び、自分の代わりにしてもらいたいことを契約で決めておく制度です。
任意後見人とは、任意後見制度において本人と契約を結び、本人に代わって財産管理をしたり、生活の支援をしたりする人を指します。
本人が自分で信用できる人を選べるうえに、任意後見人には見張り役と言える「任意後見監督人」が家庭裁判所によって選出されるため、後見人の財産使い込みなどに対する不安もなくせます。
任意後見制度のポイントは「本人の判断力が低下してから」各種サービスがスタートすることです。事前契約はしても、本人に判断能力があるうちは後見人制度にかかる費用は発生しません。
「後見人」と聞くと、似たような言葉が他にもあったなと思い出す方もいらっしゃるでしょう。
そこで2つの後見人について、以下で簡単に説明します。
法定後見人とは、本人の判断能力が低下してから家族などによって裁判所に申し立てることにより、家庭裁判所が選んで決定する後見人です。
任意後見人との違いは、本人が選んでいるかいないかという点です。
成年後見人とは、法定後見人とほぼ同じ使い方をする言葉です。すでに判断能力が不十分な場合に、家庭裁判所が選出し、決定します。
ただし「成年後見人」という言葉は、文脈によって意味が変わるため少し注意が必要です。
広い意味では、「成年後見人」は任意後見人も法定後見人も含めた、成年後見制度の担い手を指すことがあります。しかし、狭い意味では、「成年後見人」は法定後見制度の中でも最も支援の程度が重いケースにおいて選ばれる後見人を指します。
制度上の位置づけや選任方法が異なると考えてください。

任意後見制度には以下3つの種類があります。これらは本人の健康状態や判断能力の程度によって分けられます。それぞれの内容をみていきましょう。
任意後見契約の締結と同時に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申し立てを行い、任意後見をすぐに開始するタイプです。
これは、本人に軽度の認知症や知的障害、精神障害などがあるが、まだ本人には意思能力もあり、任意後見契約を締結できる場合に検討します。
本人に判断能力があるときに任意後見契約を結びます。その後、本人の判断能力が低下してきたときに後見監督人の選任申し立てをし、任意後見の開始となるタイプです。
将来型では多くの場合、契約締結から任意後見のスタートまでに長い時間がかかってしまいます。そのため、任意後見の開始までに本人が死亡することや、任意後見受任者(指名されて引き受けた人)が本人より先に死亡してしまうこともあり得ます。また、認知症が急速に進むことで、本人が契約そのものを忘れてしまうケースも考えられるでしょう。
そこで別途「見守り契約」を結ぶなど、任意後見の開始までも継続的に支援できるようにすることを検討してみてください。
任意後見制度で最も使われているタイプが移行型です。
移行型は、任意後見契約を結ぶと同時に見守り契約や任意代理契約、財産管理等委任契約なども結び、任意後見制度開始前も開始後も支援できるようにするものです。
本人の判断能力がある内は、見守り契約などで支援を行います。そして判断力が低下したとなれば、任意後見契約による支援へと移行します。
任意後見人は、本人の財産管理と生活支援を行います。具体的にはどのような内容となるか、みていきましょう。
任意後見人は本人の意思を尊重しつつ、契約の内容に基づいて事務を行う人です。
財産管理においては、以下のような事務手続きを代行します。
管理してほしい金銭や財産の範囲、管理方法などは、本人の意思を細かく反映した契約書を作成できます。
本人の生活支援については、以下のような手続きを代行します。
高齢によって本人がスムーズにできないこと、理解が困難なことを代行します。
前述したように、任意後見人は本人の代わりにさまざまな手続き(法律行為)を契約内容に基づいて代行できます。
ただし、以下のことはできません。
任意後見制度の場合、任意後見人には本人による行動を取り消す権限はありません。
たとえば、本人が自宅の売却を自分ひとりで決めてしまったり、借金の保証人になってしまったり、高額契約を結んでしまったりした場合などです。
任意後見人には取り消しができないため、トラブルを防げない事態が起こる可能性があります。
本人の食事の世話やゴミ出しといった家事手伝い、身の回りの介護行為は契約対象外です。同じく、ペットの世話も任意後見人が対応する事柄ではありません。
任意後見制度は、本人の死亡によって契約が終了します。そのため、葬儀の手配や支払いなどの死後事務は契約の対象外です。
もしも死後にある諸々の手続きもお願いしたい場合には、同時に死後事務委任契約を結んでおくとよいでしょう。

任意後見人は、法律(※)が「ふさわしくない」と定める欠格事由に該当しない人であれば、誰でもなれます。
※任意後見契約に関する法律第4条1項
【欠格事由】
ただし、本人とあまりに年齢の近い人になると、同様に高齢になり十分に事務手続きを行えない可能性があるため、年齢も考慮するようにしましょう。
この記事では、任意後見制度における任意後見人について解説しました。
元気で判断能力がある内に、将来判断力が低下したときの備えをしておくのが任意後見制度です。これは自己責任で老後の安心を整える制度であるため、老い支度とも呼ばれています。
任意後見制度について、不安があったり相談がしたいという方は南司法行政測量事務所まで、一度お問合せください。誠心誠意、親身になって対応いたします。

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