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不動産の遺産相続の流れとは? 4つの遺産分割方法についても解説

遺産相続において、不動産は特に複雑です。


不動産は資産価値が高いため、相続財産の中でも影響が大きいうえに、現金や株式と異なり物理的な資産であることから、分割が難しくなります。そのため、相続人間での意見の相違やトラブルが発生してしまうケースが少なくありません。


トラブルを避け、スムーズに手続きを進めるためには、法律や税務の知識が必要です。


本記事では、相続における不動産の基本知識や手続きの流れ、遺産分割方法などについて解説します。

相続の対象になる不動産の種類と評価方法

相続対象となる不動産にはさまざまなものがあり、それぞれに応じた評価方法が必要です。まずは不動産の代表的な種類と、それぞれの評価方法についてみていきましょう。

不動産の種類

相続の対象となる不動産には、以下のような種類があります。

  • 居住用不動産:相続人や被相続人が住んでいた自宅や別荘など
  • 投資用不動産:賃貸マンションやアパートなど収益目的の不動産
  • 特殊不動産:農地や山林、傾斜地、崖地、無道路地、商業用の不動産など

不動産の評価方法

一般的に、不動産は価値が高いものです。そのため遺産分割でひとりの相続人が不動産のすべてを相続すると、他の相続人との間に不公平が生じます。また不動産の評価は相続税の計算に大きく影響を与えるため、相続人全員で「分割」できるようにしなければなりません。


そこで必要になるのが「不動産評価」です。評価の方法は、以下の4つがあります。

固定資産評価

市町村が固定資産税を計算するために使用する評価額です。実勢価格よりも低く設定されており、通常、相続税の計算基準にはなりません。

路線価

国税庁が毎年発表する、道路に面した土地の1平方メートルあたりの価格です。居住用不動産や投資用不動産では、この路線価を基にして評価が行われます。


一般的に、路線価は実際の取引価格(実勢価格)の約80%と言われています。

公示価格

国土交通省が毎年1月1日時点の全国の土地価格を調査し、公表する基準価格のことです。土地取引の適正な価格を示す指標として用いられ、不動産売買や相続、課税などの参考にされます。

実勢価格

実際に市場で取引されている価格のことです。相続人同士で不動産を売却する際に参考にされることが多い価格で、相続財産の分配時に重要な要素となります。

不動産相続の流れ

不動産相続での流れは以下の通りです。

  1. 遺言の有無を確認する
  2. 相続人を決定する
  3. 財産の把握
  4. 遺産分割協議で話し合う
  5. 相続登記を申請する
  6. 相続税の申告と納付

順番にみていきましょう。

1.遺言の有無を確認する

最初に行うべきは遺言書があるかどうかの確認です。


遺言書があれば、基本的にはその通りに相続手続きが行われますが、ない場合は相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。


遺産分割協議後に遺言書が見つかると、遺言書に記載された内容が優先されるため、その後の手続きが無駄になってしまいます。何よりも先に遺言書の有無を確認しましょう。

2.相続人を決定する

遺言書がない場合、法律で決められた範囲の親族が相続することになります。誰が相続人になるかについて親族関係を正確に調べ、相続人を決定します。

3.財産の把握

相続財産がどのくらいあるのかを特定しましょう。


預貯金は、通帳や残高証明書で亡くなった時点の残高を確認します。不動産は市区町村から届く固定資産税の納税通知書を確認するか、住宅の権利書などを探してみましょう。


2026年の2月2日からは、個人が所有者として登記されている全国の不動産を法務局が一覧でリストアップしてくれる制度「所有不動産記録証明制度」が始まります。


参考:法務省「相続登記の申請義務化について

4.遺産分割協議で話し合う

決まった相続人全員で、遺産分割協議をします。相続人がひとりでも不参加であれば分割協議は無効となるため、必ず全員で行いましょう。


誰が何を引き継ぐかが決まったら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。相続人全員がそれに署名し、実印を押します。

5.相続登記を申請する

不動産を引き継ぐ方は、不動産の名義を変更しなければなりません。これを相続登記と呼びます。


相続登記は2024年の4月1日より義務化されているため、相続登記を行わずに放置していると過料が発生する恐れがあります。忘れずに、不動産の所在地を管轄する法務局に申請してください。


参考:法務省「不動産を相続した方へ

6.相続税の申告と納付

不動産を含んだ遺産全体の額が以下の基礎控除額を超えると、相続税がかかります。

  • 基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続税の申告と納付は「相続開始を知った日の翌日から10カ月以内」となるため、できるだけ早めに納付するようにしましょう。

不動産の4つの遺産分割方法

不動産の相続が難しいのは、1円単位でわけにくいからです。もちろん不動産のみならず、株式や絵画、宝石、骨とう品などの動産類についても同じことが言えますが、そのような場合には、以下4つの分割方法からひとつを選択することになります。

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割
  • 共有分割

現物分割

相続財産を「今ある形のままで」分割する方法です。


たとえば、自宅の所有者である父(夫)が亡くなったあと、実際に住んでいる母(妻)がそのまま自宅を相続し、長男が有価証券、長女が預貯金を相続するといった形です。


メリットは手続きが簡単なこと、デメリットは相続人間で不公平になりやすいことです。特に、不動産とその他の財産で価値の異なりが大きい場合は不公平が生じやすいため、遺産分割協議がまとまらなくなる可能性が高まります。


また、土地を法定相続割合と同じ割合で「分筆」し、各相続人が取得する方法も現物分割の一種です。

代償分割

相続人のひとりが遺産をすべて取得し、他の相続人に「代償金」を支払う方法です。


特定の相続人が他の相続人の不動産に対する相続分を買い取るイメージで、メリットは他の相続人から不満が出にくいことです。


ただし、相続人は自分の財産から代償金を支払わなければならないため、元々十分な財力を持つ相続人でなければ難しいでしょう。

換価分割

不動産を売却して現金化し、それを相続人で分割する方法です。


メリットは法定相続割合に基づいて平等に遺産を分配できることですが、不動産を売却できない場合はこの方法は取れません。


たとえば、その物件に居住者がいる場合や、簡単に買い手がみつからないような場所に建っている場合などは売却が困難です。

共有分割

「とりあえず現状のままにしておく」のが共有分割です。相続不動産を複数の相続人が各相続人の割合で「共有」します。


共有した不動産の取り扱いには全相続人の同意が必要になるため、相続後の売却やリフォーム、賃貸に出したいなどの希望があっても自由には動けません。また、固定資産税の支払いでもめるケースも多くなります。


後々トラブルが発生しやすいため、共有分割はあまりおすすめできません。

遺産分割協議で話がまとまらない場合

相続人同士の話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、裁判所で話し合うという方法が取れます。それでも合意できなければ、次は「審判」になり、家庭裁判所が遺産の分け方を決定します。


この場合は通常、不動産の評価に数十万円がかかるうえに、終了するまでに時間もかかってしまうため注意が必要です。

不動産の遺産相続は専門家に相談を

不動産の相続は、手続きの煩雑さやトラブルのリスクが伴うため、早めの準備が欠かせません。また、必要書類が多く、全てを自分たちで進めるには相当な知識と労力が求められるため、専門家に相談することをおすすめします。


特に、相続人同士の関係が疎遠な場合、話し合いが難航することもあるでしょう。専門家のサポートを受ければ、手続きがスムーズに進み、時間や労力を大幅に節約できます。


不動産の遺産相続のご相談は、南司法行政測量事務所へお気軽にお問い合わせください。

コラム監修者

南昌樹
南昌樹南司法行政測量事務所 所長
土地家屋調査士・司法書士・行政書士3つの資格保持者。1993年(平成5年)に司法書士登録後、30年以上にわたり相続・登記を担当し、96年(平成8年)に行政書士・土地家屋調査士も取得。富山県司法書士会副会長を4期8年歴任し、創業60余年の南司法行政測量事務所を率いる。
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