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遺言書の作成方法を種類別に解説! 作成時の注意事項も確認しよう

遺言書は、自分の死後に自分の財産をどのように処分したいかについて、指定する書面のことです。


遺言書の作成には、民法で一定の厳格な方式が定められているため、とりあえず自分の意思を書いておけばいいというような単純なものではありません。


この記事では、法的に有効な遺言書の形式や作成方法について解説します。また、遺言書の種類や作成時の注意事項などについても記載しますので、遺言書の準備を検討している方は参考にしてください。

遺言書の種類と特徴

具体的な作成方法について説明する前に、まずは遺言書の種類を紹介します。


遺言書は大きく「普通方式」と「特別方式」の2つに分けられます。


特別方式は、一般危急時遺言や難船危急時遺言など、事故・災害・伝染病などで身に危険が迫っている場合に認められるものです。


通常は普通方式を使うため、ここでは普通方式の以下3つについて説明します。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

ちなみに、遺言と遺書は異なるものです。遺言は先に述べた通り「故人が相続の希望を記す書類」で法的効力がありますが、遺書は単に「自分が亡くなった後に家族や友人、知人、世話になった人などに対して書く手紙」のことで、法的効力はありません。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文と日付及び氏名を自書し、押印したうえで作成するものです。


この自筆証書遺言は、遺言書の中で最も簡易な方式で、遺言者が文字を書くことができれば作成できます。費用もほとんどかかりません。


ただし、デメリットとして方式不備があれば無効となる恐れがあるうえに、紛失・隠匿・改変・偽造といったリスクもあります。また、勝手に開封はできず、家庭裁判所で検認の手続きが必要です。


なお、2019年の民法改正によって、法務局での保管が可能になったため、紛失や改ざんなどのリスクは低減できるようになりました。

公正証書遺言

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成する公正証書による遺言です。


公証人が証人2人の立ち合いのもと、遺言者から内容を聞き取って作成し、遺言者本人と証人が署名押印します。


専門家による作成であるため、方式不備による無効のリスクが低いうえに、公正証書遺言の原本は公正役場で保管されることで紛失や偽造のリスクもありません。


デメリットとしては公証人の手数料がかかること、証人の確保が必要なこと、作成のための必要書類の準備や手続きがやや複雑であることなどです。


この方法を取る場合、家庭裁判所での検認は必要ありません。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言の存在は明かしながらも、その内容については秘密にしておくための方式です。


やり方は、以下の通りです。

  1. 遺言者が自力で遺言書を作成して署名、押印する。
  2. 遺言者が遺言書を封筒に入れ、遺言書と同じ印鑑で封印し、その封書を証人2人以上の前に提出する。
  3. その場で自分の遺言書であること、かつ氏名と住所を述べる。
  4. 公証人が遺言書の提出日と遺言者が述べたことを封筒に記載し、遺言者・証人・公証人の全員が署名・押印する。

自筆証書遺言と異なり、署名と押印だけ遺言者がすれば、本文をパソコンで作成したり代筆者に依頼したりといった方法でも認められます。


デメリットは形式不備による無効のリスクがあることです。また、秘密証書遺言も家庭裁判所の検認がなければ開封できません。

遺言書作成の形式・方法

それぞれの遺言書作成の、守らなければならない形式や方法を説明します。

自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言を作成する際には、以下3つの形式を厳守しなければなりません。

  • 遺言者が財産目録を除く全文と日付、氏名を自書する
  • 遺言書の日付は曖昧にせず、作成年月日を特定できるよう〇年〇月〇日といったように書く
  • 遺言書に必ず押印する

押印は実印だけでなく、認印や指印のいずれでも可能です。


財産目録はパソコンでの作成が認められていますが、その場合は目録にも署名と押印が必要となります。預金通帳のコピーなどを添付するときも同じです。

公正証書遺言の場合

では、作成方法をみていきましょう。公正証書遺言の作成方式は、以下の通りです。

  • 証人2人以上の立ち合い
  • 遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で説明する
  • 公証人が筆記する
  • 公証人が書き終わったら、内容を遺言者及び証人に読み聞かせるか閲覧させる
  • 内容を確認したら遺言者と証人の全員が自書押印する
  • 公証人が署名押印する

公正証書遺言は、原則として公証役場で作成します。しかし遺言者の外出が困難な場合は、遺言者の自宅や病院、老人ホームなどに公証人が訪問して作成するケースもあります。


なお、未成年や推定相続人(祖父母・両親・子など)、署名ができない人は証人になれません。

秘密証書遺言の場合

秘密証書遺言を作成する際には、以下の要件を守りましょう。

  • 遺言者が遺言書に署名と押印する
  • 遺言者が遺言書を自分で封筒に入れ、遺言書と同じ印鑑で封印する
  • 1人の公証人と2人以上の証人の前で封筒を提出する
  • 提出時には、自分の遺言書であること、そして氏名と住所を述べる
  • 公証人が遺言書提出の煮付けと遺言者の申述を封紙に記載する
  • 遺言者、証人、公証人の全員が封紙に署名と押印する

すべての要件を満たせなければ無効となりますが、それが自筆証書遺言の方式を満たしている場合には、自筆証書遺言としての効力は認められます。

遺言書作成時の注意事項

遺言書によって、相続手続きの円滑化や相続する人間同士のトラブル予防効果が期待できますが、書き残す内容によっては返ってトラブルを招いてしまう恐れがあります。


遺言書の作成で、気を付けるべきことを説明します。

  • 形式を十分に確認する
  • 遺留分を考慮する
  • 特別受益に配慮する
  • 定期的に見直しする

形式を十分に確認する

民法は遺言書の書き方に対し、さまざまな要件を定めています。


準備した遺言書が形式不備で無効になると、自分の意思を実現できません。


法務局のサイトや専門家の記事なども参考にし、形式不備がないように十分確認して作成しましょう。

遺留分を考慮する

相続人ひとりだけに極端な財産分与をするような遺言書の場合、他の法定相続人から遺留分の権利を主張されるトラブルにつながりやすくなります。


遺留分とは、法定相続人(配偶者、子、直系尊属)に保証されている最低限の相続分です。民法は遺留分を優先するため、遺言者の希望通りにはならない可能性があります。また、遺留分の侵害に合うと、相続人間に大きな軋轢が発生してしまうでしょう。


そのため、最初から遺留分を考慮した内容を検討することをおすすめします。

特別受益に配慮する

特別受益とは、遺言者が生前贈与をしていたり、遺贈を受けている相続人がいたりする場合に受けた利益のことです。


この利益を度外視して遺産分割すると、他の相続人との間に不公平が生じてしまいます。そこで民法では、相続人間の公平を図るため、相続開始の際の財産に特別受益の額を加算したものを遺産分割の対象にしています(特別受益の持ち戻し)。


ただし、被相続人の意思表示によって、この特別受益の持ち戻しは免除も可能です。


希望する場合には、遺言書に「特別受益に該当する事実を具体的に」記載し、特別受益の持ち戻しを免除する旨も記載するようにしましょう。

定期的に見直しする

遺言書を作成した後に財産の状況や家族構成などが変化することもあります。その結果、内容が実情に合わなくなるケースもでてくるでしょう。


そのため、遺言書は一度作成したら終わりではなく、定期的に見直し、修正・再作成することをおすすめします。


なお、その際にも形式要件にはしっかり従うようにしましょう。

遺言作成には厳格なルールがある

死後に自分の意思や希望を主張できるのが遺言書ですが、形式や要件を厳格に守らなければ効力を発揮しません。


さまざまなタイプがあるため、自分に合った形式を選び、慎重に作成してください。


なお、公証人は原則、相続対策やトラブルを防止するための提案・アドバイスなどをしてくれません。提案やアドバイスを受けたいと希望する方は、司法書士や弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。


南司法行政測量事務所では、相続・登記に関するご相談を承っております。不安や困ったことがある方は、ぜひ一度お問い合わせください。

コラム監修者

南昌樹
南昌樹南司法行政測量事務所 所長
土地家屋調査士・司法書士・行政書士3つの資格保持者。1993年(平成5年)に司法書士登録後、30年以上にわたり相続・登記を担当し、96年(平成8年)に行政書士・土地家屋調査士も取得。富山県司法書士会副会長を4期8年歴任し、創業60余年の南司法行政測量事務所を率いる。
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