遺言書は、自分の財産をどのように受け継ぐかを明確に示すための大切な書類です。「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」といった3つの種類があり、それぞれ特徴や費用が異なります。
この記事では、その中でも自分で作成できる自筆証書遺言の書き方に焦点をあて、基本ルールや注意点、法務省が公開している見本をご紹介します。さらに作成後の保管方法についても解説しますので、遺言書を自分で準備しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

自筆証書遺言とは、財産目録を除く全文を自筆で書く遺言書です。自分で気軽に作成できるうえに、好きなタイミングで書き直しができること、費用が文房具代くらいしかかからないこと、遺言の内容を秘密にできることといったメリットがあります。
ただし、作成にはルールがあり、そのルールが守られていない場合は無効になる恐れがあるため、作成には注意が必要です。
まずは、自筆証書遺言を作成する際の法律上のルールや作成時の注意点などについて解説します。
なお、以下の記事で遺言書の種類ごとの費用目安や内訳、専門家へ依頼する場合の費用相場などを解説しています。
自筆証書遺言を作成するには、法律で定められた4つの要件を満たす必要があります。これらの要件が一つでも欠けていると、遺言書は無効となってしまうため、十分に注意しましょう。
【全文自筆】
遺言書の本文は、すべてご本人が手書きする必要があります。ただし、2019年の法改正により、財産目録のみパソコンで作成して添付するといった形も可能となりました。
【日付の記載】
作成した年月日を正確に記載してください。「〇〇年〇月吉日」や「〇〇年春」といった曖昧な書き方は認められません。
【氏名の自署】
遺言書の末尾に、ご自身の氏名を自署します。
【押印】
自署した氏名の横に押印が必要です。認印でも有効ですが、実印が推奨されます。
法律上のルールを守るだけでなく、遺言書の内容や書き方にも注意が必要です。以下3つのポイントは、遺言書が無効になったり、相続トラブルを招く原因となりやすいため、必ず押さえておきましょう。
【曖昧な書き方を避ける】
誰にどの財産をどれだけ渡すのか、明確に記載することが重要です。「長男に財産を譲る」や「妻の〇〇に任せる」といった曖昧な表現は、かえってトラブルの元となります。誰に何をどのくらい渡すか、を詳細かつ明確に記載しましょう。
【訂正方法に注意する】
書き損じを訂正する場合、法律で定められた方法(加筆・削除した箇所を示す・押印など)に従わなければ、その訂正が無効になる可能性があります。安易に修正テープなどを使うことは絶対に避けましょう。
【遺留分を考慮する】
亡くなった方の兄弟姉妹以外の法定相続人には、法律で定められた最低限の取り分(遺留分)があります。特定の相続人にすべての財産を渡す内容にすると、遺留分を侵害された相続人から金銭の請求(遺留分侵害額請求)をされる可能性があるため、遺言書を作成する際は遺留分にも配慮することが大切です。
遺留分について、どのような権利で誰がその権利を持つか、また割合や計算方法などについては、以下の記事で解説しています。

法務省では遺言書のテンプレート、作成例を載せています。以下のテンプレートを使って書き方と大切な点をみていきましょう。
【自筆証書遺言の作成例】

画像出典:法務省「自筆証書遺言及び公正証書遺言の作成例」
不動産を特定するには、登記事項証明書に記載されている情報(所在・地番・家屋番号など)を正確に記載しなくてはなりません。「〇〇の土地」といった曖昧な書き方は避けましょう。
【文例】
「遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を、長男〇〇(氏名)に相続させる。」
(※以下に不動産情報を記載)
金融機関名や支店名、口座番号などを明確に記載することで、相続手続きをスムーズに進められます。
【文例】
「遺言者は、遺言者の有する〇〇銀行〇〇支店の普通預金(口座番号:〇〇〇〇〇)を、妻〇〇(氏名)に相続させる。」
預貯金や不動産以外の財産についても、できる限り具体的に特定することが重要です。
【文例】
「遺言者は、遺言者の有する**〇〇(車種・登録番号など)**を、長女〇〇(氏名)に相続させる。」
遺言書の最後に、なぜそのように遺産を分けることにしたのか、家族への感謝の気持ちなどを記載できます。「付言事項(ふげんじこう)」と呼ばれる部分です。
付言事項には法的な効力はありませんが、家族間の感情的な対立を防ぎ、円満な相続を実現するために非常に重要な役割を果たします。
【文例】
「この遺言書は、私の家族への感謝の気持ちと、今後の生活を心穏やかに過ごしてほしいという願いを込めて作成しました。私の財産をめぐって家族が争うことがないよう、この遺言書に記載した通りに遺産を分割してくれることを心から願っています。」

遺言書を作成したら、その内容が確実に実行されるよう、適切な方法で保管する必要があります。慎重を期して書いた遺言書も、紛失してしまったり発見されなかったりすれば意味がありません。
遺言書の主な保管方法は「法務局」と「自宅」です。それぞれのメリットとデメリットを解説します。
2020年7月より、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が始まりました。法務局で保管することで、遺言書の紛失や偽造、隠匿などのリスクをなくし、相続時の手続きをスムーズにできます。
公証役場での公正証書遺言は安心な反面、高額な費用が必要ですが、法務局での保管は数千円程度の手数料で済みます。
ただし、一度法務局に預けた遺言書は、勝手に書き換えられません。内容を変更したい場合は、改めて申請手続きをすることになります。
遺言書を自宅で保管する方法は、手元で管理できるうえに費用もかからないというメリットがあります。
しかし、その一方で、紛失や盗難、偽造、隠匿のリスクがあると覚えておきましょう。
そして、自宅で保管していた遺言書は、開封する前に必ず家庭裁判所で「検認」という手続きを経なければなりません。封をしていない場合でも、この手続きは必須です。検認手続きは、遺言書の形式的な有効性を確認するもので、時間と手間がかかります。
検認を経ずに遺言書を開封した場合、5万円以下の過料に処される可能性があるため、忘れずに手続きをしましょう。
遺言書は「書き方のルールを守ること」「見本を参考にすること」「保管方法に気を配ること」が三本柱です。特に、自筆で作成する場合は日付や署名・押印など形式的な要件を欠かさないように注意しましょう。
ただし、財産や相続人の状況によっては、単純に見本をまねるだけでは十分でない場合もあります。たとえば複数の不動産を所有している、相続人が多い、事業承継が関わるといったケースでは、専門的な判断が必要です。
南司法行政測量事務所は、創業50年余りの実績があります。遺言書の作成サポートから法務局での保管制度の利用、公正証書遺言に関する相談まで幅広く対応しています。大切なご家族のために、安心できる遺言書を準備したい方はぜひご相談ください。
なお、遺言書作成に関する具体的なサポート内容については、南司法行政測量事務所の「相続・遺言業務のご案内ページ」までどうぞ。

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