生前贈与は「元気なうちに財産を子どもや孫へ渡せる」便利な制度ですが、その際には契約書を作っておくことが推奨されています。
贈与は口頭でも成立しますが、税務調査・相続・不動産の名義変更などで書面がないと不利になるケースが多く、後から「言った・言わない」のトラブルに発展することも少なくありません。
そこでこの記事では、生前贈与で契約書を作成するメリットから具体的な作成手順、契約書の種類、そして注意点までを解説します。大切な財産を安心して次世代に引き継ぐためにも、ぜひ契約書作成の重要性を理解し、適切な手続きを進めましょう。

まずは生前贈与で契約書を作成するメリットをみていきましょう。以下の4つが代表的なメリットです。
なお、生前贈与とは何か、メリットやデメリットなどについては以下の記事で解説しています。
契約書は「いつ」「誰から誰へ」「何を」贈与したのかを、明確に証明する唯一の書面です。
生前贈与は口約束でも成立しますが、証拠が残りにくいため、後々「本当に贈与だったのか?」「実際にはもっともらっていたのでは?」と疑われるなどの問題が起こりやすくなります。
しかし契約書があれば、当事者が贈与に合意した事実を明確に示せるため、第三者に対しても贈与を証明できます。
相続税の税務調査で心配なのは、不当な課税です。
税務署は、毎年110万円の基礎控除を利用した贈与が“仮装・隠ぺい”ではないかを慎重に確認します。その際、贈与契約書があれば「実際に贈与が行われた」と説明しやすく、調査がスムーズに進みます。
特に金銭の贈与は証拠が残りにくいため都度書面化しておき、不要な指摘を避けやすくしましょう。
契約書がないと、贈与した財産を巡って他の相続人から「あれは贈与ではなく、預かっていただけだ」などと主張され、相続時にトラブルになるリスクがあります。そのため、契約書で財産の帰属を確定しておくことが非常に大切です。
将来の親族間の争い、特にきょうだい間の不公平感を解消するためにも、契約書は作成しておきましょう。
不動産の生前贈与を行う場合、受贈者への名義変更(所有権移転登記)が必要です。この登記手続きを行う際、原則として贈与契約書の提出が必須となります。
契約書がないと登記ができず、結局追加で作成する必要が出てくるため、最初から書面を整えておくことがおすすめです。
生前贈与による不動産の名義変更手続きについては、以下の記事で解説しています。
生前贈与契約書には、贈与の条件や効力の発生時期によっていくつかの種類があります。ここでは契約書の種類と、一般的な生前贈与の契約書作成手順を簡単に解説します。
以下に、生前贈与契約書の種類と概要を表にまとめました。
| 種類 | 概要 | 補足事項 |
| 贈与契約書 | 最も一般的な契約書。贈与契約が成立した時点で効力が発生する。 | 金銭や不動産など、ほとんどの生前贈与に対応可能。 |
| 負担付贈与契約書 | 受贈者に一定の義務(負担)を負わせることを条件に行う贈与。 | 例:「扶養を条件に贈与」「住宅ローン残債の引き継ぎ」など。税務上の扱いが変わるため、専門家への相談を推奨。 |
| 死因贈与契約書 | 贈与者が死亡した時(相続開始時)に効力が発生する契約。 | 遺言書と異なり、受贈者との「契約」である点が特徴(効力発生のタイミングは死亡時で共通)。 |
生前贈与契約書は、以下の流れで進めていきましょう。
①贈与内容・財産の特定
金額・不動産の所在地・預金口座など、贈与する財産を明確にする。
②当事者間での合意
贈与者と受贈者が内容に問題がないか確認し、合意する。
③契約書の作成
必要事項を加筆し、日付・財産内容・氏名などを記載する。
④署名・押印
実印が望ましいが、必須ではない。ただしトラブル防止のため、署名は手書きが推奨。
⑤不動産の場合は登記手続きへ
契約書をもとに所有権移転登記を行う。スムーズに進めるために司法書士への依頼が推奨。
なお、生前贈与で司法書士に依頼すべきケースやその費用については、以下の記事で解説しています。

生前贈与契約書の雛型は、贈与財産によって記載すべき内容が異なります。以下に、どのような贈与にも共通して「絶対に外せない」具体的な記載事項と書き方をまとめました。
| 記載事項 | 具体的な書き方のポイント |
| タイトル | 例:「贈与契約書」「金銭贈与契約書」など、何の契約か明確にする。 |
| 贈与契約日 | 贈与者と受贈者が契約を締結した日付(合意した日)を明確に記載する。 |
| 当事者情報 | 贈与者・受贈者双方の氏名、現住所、生年月日を省略せずに記載する。 |
| 合意の文言 | 「贈与者〇〇は、受贈者〇〇に対し、自己の財産を無償で贈与することを約し、受贈者はこれを受諾した」といった、双方が合意したことを示す文言を入れる。 |
| 贈与財産の表示 | 金銭の場合:「金〇〇万円」のように、金額を正確に記載する。(例:金参百万円)不動産の場合:登記簿謄本に記載されている「所在」「地番」「地目」「地積」などを正確に記載する。 |
| 引渡し/履行時期 | 金銭の場合に「本契約締結後○日以内に、指定の口座へ振り込む」など、履行の時期と方法を明確にする。 |
契約書の作成は、形式的なミスがあるとその効力が認められなくなったり、トラブルの種になったりする可能性があります。作成に当たっての注意点とポイントをみていきましょう。
金額・面積・口座番号など、数字に曖昧さが残ると後からトラブルの原因になります。贈与する金銭の額や、不動産の面積などの数字は、誤りのないよう正確に記入してください。
特に不動産の場合は、評価額や地積などを公的資料どおり正確に記載するようにしましょう。
契約書に記載された氏名や住所は、可能な限り自筆(手書き)で行うことが推奨されています。理由として、手書きの署名があることで、本人が内容を確認・了承したという証拠能力が飛躍的に高まるためです。
契約書に記載された金額や財産の種類によっては、収入印紙の貼付が必要です。特に不動産の贈与契約書や負担付贈与契約書は、印紙税法上の課税文書となる可能性がありますので、事前の確認をおすすめします。
生前贈与は、家族の将来のトラブルを防ぎ、大切な財産を円滑に引き継ぐための有効な手段です。しかし、贈与は「口約束でも成立する」とされている一方で、後から争いが起きたり、税務調査で認められなかったりするケースも少なくありません。
そのため、贈与の事実・内容・条件を明確に残す「生前贈与契約書」の作成は、実務上とても重要です。
もしも「この書き方でいいのかな」「不動産の内容はこれで合っている?」と迷う場合は、専門家への相談をおすすめします。
富山県の南司法行政測量事務所では、生前贈与契約書の作成サポートから不動産の名義変更(相続登記)まで、一連の手続きを一つの窓口でサポートしています。将来の相続トラブルを防ぎ、確実に生前贈与の手続きを進めたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
なお、生前贈与に関する具体的なサポート内容については、南司法行政測量事務所の「相続・遺言業務のご案内ページ」をご確認ください。

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